建設業会計の課題
建設業会計の構造的問題
建設業の会計は、製造業や小売業とは根本的に異なります。 「原価が先、売上が後」「請求と収益認識のズレ」「完成まで粗利が確定しない」—— この構造を理解しないまま経営判断をしても、的確な意思決定はできません。
会計フロー
建設業会計のフロー
工事契約
受注残(管理)
管理会計の起点。以後、原価と進捗のコントロールが必要
※ 売上はまだゼロ
原価発生
未成工事支出金
原価は先に出ていく
請求・入金差額
売掛金(完成工事未収入金)
契約資産(工事未収入金)/ 契約負債(未成工事受入金)
請求と収益認識のタイミングが一致しない
引渡・検収
完成工事高 / 完成工事原価
収益認識の確定
代金回収
現預金
キャッシュの実現
工事進行基準(収益認識基準)
計算式
当期売上 = 契約金額 × 進捗率
進捗率 = 発生原価 ÷ 見積総原価
前提条件(これが崩れると破綻する)
- ●見積総原価を継続的に更新できること
- ●原価の月次締め(未払計上)が正確にできること
- ●工事別に原価が集まり切ること
この前提が崩れると、財務会計の売上も、管理会計の粗利も「もっともらしい嘘」になる
原価構造(原価率の内訳)
材料費
15-25%
資材・消耗品
労務費
20-30%
自社労務・直接人件費
外注費
40-55%
協力会社への支払
経費
5-15%
機械・仮設・その他
管理会計の本質
原価率で着地を読む
管理会計では、売上より先に「原価の状態」が決まる。 だから、原価率の変化を追うことで、着地売上・粗利を予測できる。
当初
見積原価率
受注時点の基準。この数字が「あるべき姿」として、以後のコントロールの起点になる。
更新
最新見積原価率
進行中のコントロール対象。設計変更・追加工事・原価増を反映し、常に更新する。
結果
実績原価率
発生した事実。過去は変えられないが、次の見積精度を上げる学習材料になる。
経営が見たいもの
「原価率が崩れた時点で、着地売上・粗利がどう変わるか」
これを言語化できているダッシュボードが、世の中にほぼ無い。
6つの構造的問題
なぜ建設業の経営判断は遅れるのか
原価が売上より先に動く
材料・外注費は先払い。売上計上は後。月次の損益が実態と乖離する。
売上と入金がズレる
出来高請求しても回収は数ヶ月後。資金繰りと損益が連動しない。
進捗率が見積依存
「発生原価÷見積総原価」で進捗を測るが、見積が変われば進捗も変わる。
工事別の締めが運用できない
請求書が工事IDで切れない、配賦ルールが無い、外注請求が遅い。工事別の未払・未収・契約差額が管理できず、月次の原価率が歪む。
完成まで粗利が確定しない
進行中は「見込粗利」。追加原価・設計変更で着地が変わり続ける。
財務会計と管理会計が混在
税務用の数字と意思決定用の数字が分離されておらず、どちらも中途半端になる。
本当の問題
原価管理システムが使われない本当の理由
システムを入れたのに使われない。その原因は「システム」ではなく「データ設計」にある。
結局Excelに戻ってしまう
原価管理システムを導入したのに、使いづらくて結局Excelで管理している。
月末まで数字がわからない
今月の原価がいくらか、月末の締めが終わるまでわからない。手遅れになる。
どのデータが正しいかわからない
基幹システムの数字とExcelの数字が合わない。どちらを信用すればいいかわからない。
本質的な問題:「実績」と「見込み」の混同
現状(混乱の原因)
- • 「実績」と「見込み」を区別せずに設計
- • 基幹から来るデータを手入力している
- • 現場判断が必要なものを経理が入力
- • 「誰が何を入れるか」が決まっていない
あるべき姿
- • 実績(発生原価)→ 基幹から自動取得
- • 見込み(着地予測)→ 現場が判断して入力
- • 確定(予算)→ 承認後はロック
- • 計算(消化率等)→ 自動算出
このルールを最初に決めれば、あとは自動で回ります。
「誰が何を入れるか」を明確にすることが、原価管理DXの第一歩です。
私たちの解
「財務会計の正しさ」と
「経営判断の速さ」を分離する
売上を1つにせず、3つ並べる
財務会計売上
収益認識基準に従う結果
管理会計売上
進捗×契約×最新見積=意思決定用
キャッシュ売上
請求・入金=資金繰り用
粗利も同様に分離する
見積粗利(当初)
受注時点の計画値
最新見積粗利(更新)
現時点での着地予測
実績粗利(結果)
発生した事実
1つの数字で経営判断しようとするから、遅れる。
私たちは、目的別に数字を分離する。